前回、野菜(正確には、果樹、米を含めた農産物)に占める有機JASの割合を計算すると、0.24%程度だったという話を書きました。この0.24%という数字、最初から「こんなに有機は広がっていないのか」と問題意識を持って計算していたわけではありません。むしろ逆でした。
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| 当時の農水省からの発表 野菜、果樹、米(当時のビオ・マーケットの取り扱いの中心)の合計が、0.23%だった |
私がビオ・マーケットにいた頃の話です。有機JAS制度が始まってまだそれほど経っていない時期で、有機農産物そのものが非常に少ない。その中で、有機農産物を専門に扱っている会社として、自分たちがどのくらいのシェアを持っているのかを示すために計算したのが始まりだったと思います。当時の数字は記憶になりますが、国内の野菜のうち有機JASの野菜は0.24%程度、その中でもビオ・マーケットがかなりの割合を扱っていました。
ですから最初の0.24%は、私にとって「少なすぎる」という数字ではありませんでした。むしろ、「有機JASの野菜というのは、こんなに希少なんですよ」という数字でした。例えば、大根が1000本あったとして、有機JASの大根はそのうち2本か3本しかない。
「こんなに希少なんです。だから価値があるんです」
スーパーや百貨店に営業するときにも、そんな説明をしていました。有機農産物が高い理由を説明するときにも使えます。今振り返ると、この本で書いた「有機は特別なもの」「その価値を理解してもらう」という考え方を、私自身が普通にやっていたわけです。
ところが、この0.24%という数字を翌年も計算する。その次の年も計算する。あまり変わらない。最初は希少価値を示す数字だったものが、何年か見ているうちに、「ちょっと待てよ。いつまでたっても0.24%というのは、単に広がっていないということじゃないか」と見えるようになってきました。
当時は、ヨーロッパの話もよく出ていました。ヨーロッパでも有機農業は最初から多かったわけではない。ある時期から大きく伸びている。だから日本も、今はまだ少ないけれど、いずれ大きく伸びる時が来るだろう。私自身も、スーパーなどへの営業では「有機農産物はこれから伸びます。今のうちから売場を作りませんか」というような話をしていた記憶があります。たぶん、その頃の私は本当にそうなると思っていたのでしょう。
もっとも、「ヨーロッパで伸びたのだから、日本も同じように伸びるのか」と突き詰めて考えていたかと言えば、そこまで深くは考えていませんでした。ヨーロッパはヨーロッパ、日本は日本だろう、くらいの感覚もありました。それでも、いつかどこかに、急に伸び始めるポイントがあるのではないか。そんな期待はありました。
その後、有機農業推進法が成立し、国の実施計画の中でも、有機農業をまず1%まで広げようという目標が掲げられました。当時は、「1%になれば景色が変わる」といった期待もありました。ただ、実際には、その1%を目指す取り組みも、有機農業の世界の中だけで何とか広げようとする発想が強かったように思います。有機農家を増やす。有機の流通をつくる。有機に理解のある人に買ってもらう。もちろん、それぞれ必要なことではあります。でも、結果として1%には届かず、思ったような広がりにはなりませんでした。その後、有機農業推進法そのものも、当初の勢いから比べると、かなりトーンが下がっていったように私は感じています。
今振り返ると、「有機を広げる」という目標を掲げながら、その方法まで有機の世界の中だけで完結させようとしていたことに、やはり無理があったのではないかと思います。
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| 有機の世界の中だけで解決しようとすることの限界 |
0.24%という数字は、最初は自慢するための数字でした。
「こんなに希少なものを扱っているんです」と。
それが何年も同じような数字を見続けるうちに、「なんで増えないんだ」という数字に変わっていきました。同じ0.24%でも、自分の見方の方が変わったのだと思います。この変化も、「有機は特別だから価値がある」という考え方から、「特別なままだから広がらないのではないか」と考えるようになる、その途中にあったのかもしれません。
本書参照:
第2部 5「有機の内側だけで問題を解こうとする限界」36〜37ページ
「おわりに」132ページ

