小屋の北側に、小さな池を作った。いまではメダカが泳ぎ、カエルが鳴き、糸状藻が増えすぎて困るくらいの、小さなビオトープになっている。
では、なぜそこに池を作ったのか
最初から「生き物の楽園を作ろう」と思っていたわけではない。もちろん、そうなれば面白いとは思っていたが、最初の発想はもう少し実用的で、もっと身勝手なものだった。小屋の北側に水辺を作り、そこから涼しい空気を取り入れる。北側の低い位置から空気を入れ、南側の高い位置に通気口や換気扇をつける。そうすれば、真夏でも自然の風が抜けて、エアコンがいらない小屋になるのではないか。さらに、吸気口の前に水辺があれば、空気はいくらか冷やされるはずである。水面を渡った空気が小屋に入り、暖まった空気は上から抜けていく。これは、なかなかよくできた仕組みではないか。そう思ったのである。北側の通気口は、冬には薪ストーブの煙突を外に出す穴でもある。夏は吸気口、冬は煙突の出口。我ながら、よく考えたものだと思う。こういう工夫をしている時が、一番楽しい。
それで、北側に穴を掘り、防水シートを敷き、砂利を入れて池にした。雨水タンクから水を引き、砂利の斜面をちょろちょろ流して、水位が上がれば反対側から流れ出るようにした。小川の中の浅瀬のようなものを作りたかったのである。そして、メダカを入れた。水草も入れた。カエルもやってきた。トンボも来た。気がつけば、冷却装置のつもりで作った水辺は、いつの間にかビオトープになっていた。
では、肝心の「涼しい空気」はどうだったか
今日、南側の気温は32度だった。北側の吸気口から入ってくる空気は29度。たしかに、3度ほど違う。水辺と北側の日陰の効果は、まったくないわけではない。数字で見ると、少しは効いている。しかし、だからといって、エアコンがいらなくなるかというと、まったくそんなことはない。ここは長野の高原ではない。真夏の平地である。昨今の暑さは、こちらの小さな工夫など簡単に押しつぶしてくる。北側の水辺から涼しい空気が入る、などという話は、理屈としては間違っていないのだろうが、それで快適に過ごせるほど、現実は甘くなかった。
小屋の中で過ごすには、やはりエアコンは必須である
それでも、この仕組みは失敗だったとは思っていない。吸気口の空気が3度低いというだけでも、何もしないよりはよい。水辺があることで、北側の空間が少し落ち着いた雰囲気になった。メダカは増え、カエルは鳴き、鳥が水を飲みに来るかもしれない。もともとの目的からすれば、少し外れたのかもしれない。だが、外れた先に面白いものができることもある。
エアコンの代わりにはならなかった。でも、小さな水辺はできた。
そう考えると、これはこれで、悪くない。自然の力で涼しく暮らす。そんなことを少し夢見て、現実に軽く打ちのめされながら、それでも水辺の生き物を眺めている。
北側ビオトープ冷却システム、効果は少しあり。
ただし、真夏のエアコン代わりにはならない。


